セイクリッドティア、ファルンホープなど、SO2ndには反物質武器というものが登場する。
反物質とは、反粒子で構成されている物質である。
つまり、反物質武器は反物質を使用した武器ということになる。
電子(e-)⇔ 陽電子(e+)、陽子(H+)⇔ 反陽子(H-)の様に、全ての粒子には、対応して反対の電荷を持つ反粒子が存在し、これらの反粒子が粒子と引きあって対消滅を起こす時に膨大なエネルギーが発生するという。つまりセイクリッドティアやファルンホープから放出される反陽子が物質で出来ている敵に接触、対消滅を起こす際に発生する莫大なエネルギーによって、クロード達は十賢者の身体を守るフィールドを破壊するのである。
ちなみにエネルギーが発生するその根拠は、物質とエネルギーというものは変換が可能であるということからくる。物質が完全にエネルギーに変わる時のエネルギー量はE=mc2、つまり質量×光速の二乗という式で表わされ、その威力は現実にも原子爆弾として実際に証明されている。(原爆使用後の質量は使用前に比べて減少しており、質量保存の法則が成り立たない。この消滅した部分が爆弾のエネルギーとなる)
この事はつまり、反陽子を陽子で出来ている物質、つまり“世の中”に放置しておくと勝手に反応して莫大なエネルギーを放出して無くなってしまう事を表す。これを防ぎ、必要な時に必要なだけ反陽子を放出するのがレアメタルなのであるが、そのレアメタル自体は物質でなければならない。ところがレアメタルが物質だとするとレアメタルと接触した反陽子は反応を起こしてしまう筈である。そんなレアメタルとは、一体どんな金属なのであろうか。その可能性について考えてみた。
以下はエンサイクロペディアにあるレアメタルについての記述である。
【レアメタルによる反物質の安定化について】
バーク人は宇宙でも数少ないケイ素生命体として
知られています。このバーク人には、体内において
レアメタルと呼ばれる鉱物を精製・再結晶化する
性質があります。
レアメタルは、特定の振動を与えることによって、
反陽子を吸収・放出するという非常に特殊な性質を
持っており、バーク人は、このレアメタルを
使って反物質作用を起こすことで生命活動を
維持しているのです。
このレアメタルの発見により、三次元空間に
おいて、反陽子を自由にコントロールすることが
可能になりました。
レアメタル(LEA Metal)とは、Low Energy Antiproton Metalの略である。(アイテム説明欄より)
直訳すると低エネルギー反陽子金属。
勝手に意訳してみると“エネルギーが低い=安定な状態”なので安定化反陽子金属。
反陽子を安定化する金属か、安定化した反陽子で出来た金属か、とにかくその様な意味になりそうだ。エンサイクロペディアの記述と合わせて考えると、レアメタルは特定の刺激に対応して“反陽子を安定化させた状態でその構造の中に保持”し、また“反陽子の安定化を解いて放出”するという能力を持った金属ということになる。このコントロールは恐らく反陽子の個数レベルにまで及び、必要以上、つまり十賢者のシールドを破壊する以上のエネルギーが放出されて使用者を含む周囲に被害が及ぶのを防いでいると推測される。何しろ、衛星を吹っ飛ばす程の威力を持つ武器なのである。
では、反陽子の安定化とは具体的にどういう事だろう。またそんな事が可能なのだろうか。
反陽子の安定化については、
1.反陽子を物質とは接触をしない状態に置く。
2.反陽子を物質と接触しても対消滅を起こさない状態にする。
といった事が考えられる。
方法については、1.は、電荷を持つ粒子はジャイレーションを起こす為に磁場に沿ってしか運動出来ず、これを横切る事が出来ないという法則に従った磁気による隔離が考えられる。そして、2.は反陽子の電荷をマイナスからプラスに変え、プラスの電荷を持つ陽子と引きあうのを阻止するという事が考えられる。
しかし、磁場を構成する磁力線はその周囲に別の磁場が発生した場合、そちらの磁力線と融合する等の変形の可能性が考えられ、また個数単位での陽電子のコントロールは難しいと思われるので、2.の方がより実現性があると考えられる。
そこで2.の状態の実現方法を考えてみるが、この時に参考となるのが核融合という現象である。
これは原子核同士を衝突、融合させる事でエネルギーが発生するというもので、同じプラス電荷を持つ原子核同士を衝突させるには非常に高い温度が必要となる。しかし、これをミュオン(μ+、μ-)という構造の無い粒子を用い、比較的低い温度で実現させる方法があるという。それは一方の原子核の近くにμ-を配してそのプラス電荷を減じるというものだ。
核融合の場合、ミュオンは同電荷による粒子の反発を抑制するが、これは、異電荷による粒子の引きあいの抑制にも応用出来ると考えられる。パイオンの崩壊によって発生するミュオンの寿命は2.2マイクロ秒と非常に短いものであるが、もしもミュオンの様な働きをするもっと寿命の長い安定な粒子が存在し(仮にそれをμ'+、μ'-とする)、H-の周囲にμ'+を多量に配置して反陽子のマイナス電荷を遮蔽、見掛け上陽子と同じプラス電荷にする事が出来れば、対消滅が防げると考えられる。この見掛け上プラス電荷の反陽子は電子を伴うことも出来るだろう。この状態を、反陽子の安定化と考えることは出来ないだろうか。
また、安定化した反陽子を活性化するには、μ'-を発生させて反陽子周囲のμ'+を相殺(或いは対消滅?)すればよい。
つまりレアメタルとはμ'+、μ'-の発生をコントロールする事の出来る物質ではないか、と考えられるのである。
細かいコントロール方法や反陽子が構造上どの様に取り込まれるのか、等についてはとても考えられるものではないが、レアメタルの反陽子安定化原理のあくまでも可能性の一つとして、以上の様なものを考えてみた。