紋章術とはかつて創造神トライアへの祈りの中から巫女達が見出した、『紋章』から神の力を得る術であるとされている。一般に、紋章術を発動する能力は『マナの祝福』と呼ばれる先天的資質に左右され、誰もが自由に使える術ではない。
現在までに明らかになっている紋章術を用いる種族は、フェルプール、フェザーフォルク、旧異種族(地球人の可能性有)、ルーン、エクスペル、ネーディアン、そして地球人である。よって紋章術が種族特有の能力であるとは考えにくい。また、ロークやエクスペルに似た形式の紋章術が伝わっているのは、かつてのネーデによる銀河支配の産物であると考えられる。
ここで興味深いのは、ローク、エクスペル、エナジーネーデにおける紋章術の発動方法が異なるという事だ。ロークでは呪紋と紋章を描くという行為(SO1マンガ参照)を用いているのに対し、エクスペルでは呪紋と体に刻んだ紋章、そしてエナジーネーデでは呪紋詠唱のみを使って紋章術を発動させている。紋章術を使う能力についてはネーディアンが理想的なDNA塩基配列を持っていることが明らかになっているので、呪紋詠唱による発動が最も理想的な紋章術発動方法と言えるであろう。
しかし奇妙なのが、ロークとエクスペルの発動方法の違いである。特にこの二者を比べたとき、ロークの発動方法には不思議な点が多い。そしてロークに関してもう一つ言えるのが、回復呪紋の存在である。2ndの設定においては回復呪紋はネーディアンしか使えず、確かにエクスペルには回復の紋章というものは伝わっていなかった。その為、レナはエクスペルでは異端の存在であったのだ。にもかかわらずロークにおいては回復呪紋は馴染み深いものであり、法術医という職業すら存在する。
そこで、疑問点の多いロークにおける紋章術を中心にこれを検証してみる。
上記の通り、ロークでは呪紋詠唱と指の動きによって紋章術を使う。しかし注意しておかなければならないのは、指の動きというのはゲーム中の設定ではないので、その重要性については疑問があるということだ。よってここでは指の動きを精神統一の補助と考えることにするが、そうするとローク人は呪紋詠唱のみで紋章術を使っていることになり、これはネーディアンのみが使える理想的な方法を用いていることになってしまうのである。これを第1の疑問点としておく。
「紋章の力を借りる」という言葉や、紋章を手に入れることで新しい呪紋を覚えることから、紋章術と呪紋の間には何らかの関わりがあると思われるが、エクスペル人の様にローク人が紋章を体に刻んでいる気配はないので、ここでは紋章=呪紋という関係が成り立っているのだと思われる。ちなみにエクスペルにおける呪紋は紋章そのものではないことが、SO2ndマンガによって証明されている。無論、SO1と同様ゲーム中の設定ではないので完全に信頼出来るとは言えないが、SO1に比べてかなり詳細にしかも数度に渡り描かれているので、SO1よりは信憑性が高いと思われる。
紋章=呪紋ということは、ローク人が紋章を一定の規則に従って発音している可能性を示す。
ネーディアンの呪紋詠唱がエクスペルのものと同じなのか確証が得られないが、レナがエクスペル文化内でも呪紋(特に回復呪紋)を操れたことから、エナジーネーデの呪紋詠唱がエクスペル方式であると仮定すれば、ローク方式は他の二者とは全く違う方法であると言えるだろう。ここに、第1の疑問点を解く鍵があると思われる。
ロークでは原住遺族ルーンが『魔力の源』として知られていた。紋章術が創造神の力を借りているという事実から考えると、おかしな事だ。これを第2の疑問点とするが、これについては疑問ながらもほぼ事実であることがゲーム中から見て取れる。ルーン達は魔力を司っており、魔力の存在する場所ならば様々な事を感じることが出来るのである。それが例えば時間軸の違和感であったりするわけだ。ルーンとは一体、紋章術発動プロセスに関してどの様な場所に位置づけられるものなのだろうか。
以上の二つの疑問点を考える上ではっきりさせておきたいのが、紋章術発動のおおまかなプロセスである。SO2ndマンガでセリーヌが言うところの「体に特定のパターンを刻むことで己の精神力を様々なエネルギーに変換することができますの」という言葉は、
という図式を思わせるのだが、しかしここで私は仮説として以下の式を提示する。
精神力とはお馴染みのMPのことであり、呪紋を唱える度に消費されていくものである。ここでは精神力を意志力と捉え、生物の物理的活動(脳内物質の分泌等)とは分けて考える。(よって現代の技術による精神力の数値化は行えない)
そして(1)とは違う部分が、紋章力の部分である。
紋章力という言葉がゲーム中に登場したかは、はっきりとした記憶が無いが、これはルーンの言うところの『魔力』と同じものだと考えていただきたい。ステータス欄の『まりょく』とは全くの別物なので注意すること。そしてこの紋章力の存在については、私の定義した全くの仮定のエネルギーである。
この紋章力は創造神の力に酷似したものであり、それは被造物が産生出来るエネルギーの中で最も根源的、未分化なものである。故に紋章力に方向性を与えることによってあらゆる事象を起こすことが可能なのだ。紋章力を具現化させる過程、つまり紋章力をある方向性に従って分化させる過程は、神の術であり、これを模倣したものが紋章術であると考えるのである。
さて、現在考えているのは紋章術発動プロセスにおけるルーンの位置づけなのだが、紋章術発動には判っているだけでも複数の要素が関っている。各文化における紋章術発動経路を比較し、それぞれの要素の担う役割を考えることが問題の解決には必要であるだろう。
まず、紋章術を用いるにあたってどの文化でも例外なく必要なのが『マナの祝福』である。これが先天的なものであることは、シークレットタレントとして開花しないことからも推測出来る。この能力は一体何か。恐らく基本的なものであることに間違いはないだろう。ということは(2)の式の中においても基本的な部分に属するだろうと考えられるので、この能力は MP--→TSF 変換を行う要素であると推測出来るのではないか。この変換がなされなければ紋章を刻み、呪紋を唱えたとしても紋章術は発動しない。
次の要素は勿論、呪紋と紋章である。この二者が紋章力の分化を行わせていることは、まず間違いのないことだろう。問題は二者の違いであるが、これの答えとしては、2ndマンガでは呪紋詠唱によって刻んだ紋章が浮かび上がっている。すなわち紋章を喚び出しているという印象を受けるので、呪紋の役割は『紋章の指定』と考えるのが妥当と思われる。しかし、この考えではエクスペルについては当てはまるがロークとエナジーネーデについては一体何を指定しているのか不明である。加えてロークの呪紋は他の二者のものと違う可能性もある。そこで、ロークとエナジーネーデに固有のものが、エクスペルでの『紋章』と同じ役割をしているのではないかという推測をしてみた。何が固有なのかといえば、それはロークにおけるのルーンの存在とネーディアンのDNA塩基配列である。
ルーンの身体に紋章が刻まれているということは、ゲームブックを見たことのある人ならば御存知だろう。この真偽については、キャラデザを担当しているMEIMUさんのイラストなので信憑性は高い。加えて彼等は魔力(このレポート内では紋章力)の存在する場所ならば様々な事を感知出来る、一般の生物を越えた特殊な存在でもある様だ。そこでローク人は呪紋によってルーンから紋章を召喚している、と考えることは出来ないだろうか。これならばルーンが魔力の源と呼ばれる理由にもなるだろう。ローク人に広く知られている紋章、またはローク各地に隠された紋章は、かつてルーンと接触したムーア人が、ルーンの紋章を借りる為に彼等の持つそれぞれの紋章の特定の仕方を記したものだと考えられる。これはムーア人がルーンの協力を受けて真実の瞳を造ったという設定とも一致するだろう。
以上がルーンの果たす役割についての推測である。
ちなみにネーディアンのDNA塩基配列についても、これが紋章的役割を果たしていると考えることは出来る。塩基配列の一体何が紋章を表しているのかに関しては、全く謎としか言い様がないのであるが、DNAの全てが生体の合成に用いられているのではないこと、そして哺乳動物や植物のDNAになって初めて出現する、タンパク質合成には全く関与しないイントロン(intron)と呼ばれる塩基配列部分の存在等から、これらの塩基配列が総合して幾つかの紋章を表している可能性を考えることが出来るのである。ネーディアンは主要な紋章を自身の中に持っている為に、呪紋詠唱のみで紋章術の発動が可能なのではないだろうか。つまり彼等にとっての呪紋は、自身の内の紋章を指定することなのである。
以上に述べたことを、図によって示す。
こうしたプロセスの推測によって、紋章術に関る、とある謎にも仮説が見出せる。それは錬金だ。
錬金にはマナの祝福が不可欠であるが、紋章術とは違ってMPの消費が無い。もしもMP消費があるとするならば、鉄を別物質に変換する際に必要なエネルギーは紋章力によって賄われると考えられるのであるが、その可能性が無いのである。しかし、例えば鉄を金に変えるにはFeの原子核に陽子を53個も付加させなければならないし、鉄をダイヤモンドに変えるとすれば20個の陽子をFe原子核から分離しなければならない。そこに必要なエネルギーは簡単な実験器具で生み出せるようなものではないのだ。要するに練金の過程に紋章力によるエネルギーの産生がなければ、これは成立しないのである。
けれども錬金術者がMPを使わない以上、エネルギーの由来は不明だったわけだ。が、
である以上、MP--→TSFを行うマナの祝福の役割を考えれば、錬金術者以外の精神力が関っていることは間違いない。なおかつその何者かはマナの祝福を持たず、錬金術者のそれを用いて自らの精神力を紋章力に変え、更に物理エネルギーとして具象化しているのである。
これの該当者を考えた時、手掛かりとなるのが練金の習得に必要なスキルである。鉱物学、科学技術、そして妖精論・・・何故練金に妖精論がかかわるのか、不思議に思ったことはないだろうか。妖精とは自然物に宿る精であり、つまりは生体以外の物質に宿る精神だ。妖精論の存在は、妖精の精神力が作用することによって練金が行われていることを推測させるのである。
この事実はSOにおける妖精の存在を示唆すると共に、精神力の正体についての命題ともなるであろう。
ちなみに地球における練金は、多分に宗教的意味合いが含まれていた。錬金術は金を生むという物欲的な側面を確かに持っているが、むしろ哲学的なものであったのだ。こうした錬金術者達が目指したのは、賢者の石の作成である。あらゆる物質が四大要素によって構成される以上、その構成を組み替えればあらゆる物質が金になるという理屈となり、この変換を担う物質が賢者の石だったのである。あくまで標準アイテムの一部として扱われているSOの賢者の石とは全く意味合いが違うのだ。ただし、賢者の石、哲学者の石という名称、そしてその存在は、アリストテレスなどに代表される過去の賢人達は物質転換の理論に精通しており、故に全ての物質の操作方法を知っていた、という後世の錬金術者達の思い込みによって作り出された、非常に架空的なものである様だ。
話が逸れたが、最後にもう一つの疑問点であるロークの回復呪紋について考えてみる。
回復呪紋というものがネーディアン特有の能力であるように描かれていたのがSO2ndであるが、実際にはローク人も・・・具体的にはミリーとヨシュアが・・・用いることが出来る。回復呪紋は法術としてある程度区別されてはいる様だが、基本的に他の紋章術と同じであることに変わりない。
そして、エクスペルには回復の紋章自体が伝わっていないので使うことが出来ない。しかしこれは、反対に言えば紋章が伝わっていればエクスペル人も回復呪紋が使えるということを表しているだろう。要するに、回復系統の呪紋は攻撃その他の呪紋と比べてその紋章の見出される確率が低いのではないか、と考えられるのだ。あるいは見出すことが困難であると言ってもいい。その為に、自身の中に回復呪紋を持つネーディアン以外の種族の間では、回復呪紋は習得の難しいものであったのである。恐らくルーンがこれの習得に成功した種族であった為に、その紋章によって紋章力を分化させるローク人も回復呪紋を使うことが出来るのであろう。
以上が紋章術に対する私の考えである。
不十分な部分も多々あるが、次第にこれらがゲーム中で解決されていくことを期待している。何となく最後までこのあたりは曖昧なままの様な気もするのだけれども・・・。