紋章兵器研究所は、7億年前のものとはいえ、銀河を支配したネーデの技術による建造物であり、単なる建物としての頑丈さは文句のつけどころの無いものだったに違いない。それでいて、研究員達はいなくなり、研究所自体もあちこちが崩壊している。
しかし、7億年も前に崩壊したのに、多少手を加えれば再び実用になりそうなほど、以外にもしっかりと建っている。中央のコンピュータも生きているし、爆発があったから崩壊した、とは考えにくい。
では、なぜ研究所は壊れ、研究員はいなくなったのか。
ここで、エンサイクロペディアを紐解くと、クリエイションエネルギーの説明として『最悪の場合は時空崩壊を起こす可能性すら存在する』とある。研究所ではクリエイションエネルギー発生装置の研究をしており、研究所の崩壊はこの装置の暴走である。すなわち、装置が暴走し時空崩壊(あるいはそれに匹敵するような事態)が起きた、ということである。時空とは、時間と空間のことで、3次元空間に時間を加えたものである。このどちらが崩壊しても、研究所はもっと酷く崩れているか消えて無くなっているはずである。そこで、『時空が大きく歪んだ』と考える。物体は空間に沿って存在するので空間が歪んでも問題はないのだが、時間が歪むと、大きな問題が起きる。つまり、新しくなったり古くなったりするのだ。時間が戻ると研究所は新築同然になるか、建設前の状態になってしまうので、ここでは時間が進んだのだと考える。
研究所のあちこちが崩れているのは、たしかに何らかの爆発によるところもあるかもしれないが、さらに、時間の強制的な経過によって朽ち果てていったと考えられる。研究員達は外の世界と時間の進み方が違うことに気付かないが、時空転移シールドによって外界との接触が絶たれているので、食料は補給されず、餓死するしかない。アームロックへのトランスポートは、爆発によって壊れたか、装置の暴走による影響か、時間の進み方の違いのいずれかの理由によって使えなかったと考えることができる。
リーマが諦めざるをえなかったのは、最悪の事態に陥らなかったとしても、結局はどうしようもなくなることを知っていたからではないだろうか。